放浪剣士ゾル・ギフィウスと仮面の妖魔

2-7.密会

 その日から、お嬢さまは時々ルッグを屋根裏部屋に呼びつけるようになった。

 二度目に呼びつけられた時には、ゆかほこりき出され、窓のさんにも、置いてあった家具調度類にも、雑巾が掛けられ綺麗きれいになっていた。
 物置がわりに使われ閉め切られていたためによどんでかび臭くなっていた空気も、換気されていた。

「こんなに広いお屋敷だけど……」

 少年下僕の体に自分の体をすり寄せて、彼の着ているシャツのボタンを一つ一つ外しながら、お嬢さまが言った。

「使用人たちの目から逃れて、楽しいひと時を過ごせる場所は、ここ位しか無いのよ……だから、メイドたちに命じて少しでも綺麗きれにしておいたわ。でも、安心して。とつぜん私が屋根裏の整理整頓に興味を持ったからって、私たちのことを疑う者なんて一人も居やしない。……『あの我儘わがままお嬢さまが家の事に関心をもつなんて』と驚きこそすれ、まさか私が、こうして下僕なんぞのシャツを脱がせてあげているなんて、誰も想像すらしていないわ。……それに、お父さまはご商売に熱心で、デクレスとリイドの間を馬車で行ったり来たりに大忙しだし、お母さまはお母さまで、町の奥様がたと、やれ芝居だ、お茶だ、お買い物だって、大忙しだもの。私が何をしようと気付きゃしない」

 そう言って、少年の肌開はだけた胸に、つうーっと、指を滑らせた。
 ルッグの突き出た喉仏がゴクリと上下に動いた。
 既に股間の一物は鉄のように硬くなっていた。

(……駄目だ……もう逃げられない……もう逆らえない)ルッグは思った。

 彼を生かすも殺すも、お嬢さまミイルンの心一つだった。

 しかし、本当は、ミイルンに脅迫されたというのは自分自身に与えた言い訳だ……そう自覚していた。

 餌を前に「良し」の命令を待つ飼い犬のように、彼は、お嬢さまに「ルッグ、ちょっと屋根裏部屋に来て私を手伝って」と言われるのを心待ちにしていた。

 お嬢さまの柔らかな体を抱きしめて、爆発しそうなほど溜まった欲望をその体の中に注ぎ込みたくて、どうしようもなかった。

 突然、ルッグは、ミイルンの体を痛いほど抱きしめて自由を奪い、使われなくなって屋根裏に仕舞われていたテーブルの上に押し倒し、荒々しく彼女の唇を吸い、舌をねじ込んだ。

(くそっ、くそっ、くそっ!)

 お嬢さまの口の中を舌でき回しながら、ルッグは自暴自棄やけになっている自分を感じた。

 閉め切った屋根裏の物置部屋が、少年と少女の濃厚な体臭で満たされていった。

 * * *

 少年下僕ルッグお嬢さまミイルンの密会は、日が経つにつれ、回を重ねるにつれ、頻度が増していった。
 少しも疑おうとしない大人たちに対し、二人は徐々に大胆になっていった。

 そして、あの『霧の日』が来た。