青葉台旭のノートブック

「仮面ライダー」についての雑感

気が向いたときに、U-NEXT で初代「仮面ライダー」を観ている。

現在、第15話「逆襲サボテグロン」を観終わったところだ。

藤岡弘が怪我で一時降板してから2号ライダーが登場するまでの数話は、やはり脚本家が苦労しているな、と思った。

その間、本郷猛の声を吹き替えていたのは、ショッカーの声を演じる納谷悟朗の実弟、納谷六朗。

ライダー・スーツは急遽(きゅうきょ)スーツ・アクター用に作り直したのだろうか?
かなり雑な仕上がりだ。
とくにヘルメットの作りが雑に見える。

最初は怪奇的・悲劇的だった番組のトーンが2号ライダーの登場以降、明るい冒険活劇に変わったという話は良く知られている。
実際に観ると確かに、2号ライダーと仲間たちのムードは、1号の時とは大きく違う。

もちろん藤岡の怪我は偶発的な事故によるものだが、それを機に、番組のテコ入れを図ろうという製作者側の意思も感じた。
実際、当時のチビッ子たちの間で人気が出始めたのは、2号ライダーが登場して以降だと言うから、正しい判断だったのだろう。
ダーク&シリアスで行くか、ライト&ポップで行くか、変身ヒーローものの製作者にとっては悩ましい問題だ。

本郷猛との悲恋が描かれた緑川ルリ子も退場し、代わりにコミカルなライダー・ガールズが登場。

ルリ子の親友ポジションだった野原ひろみは継続出演している。
1980年代には頬が痩(こ)けて顎が鋭くなり、今で言う「美魔女」的な雰囲気を漂わせていた島田陽子も、この頃は、ふっくらとした頬のお嬢様っぽい感じだったんだな、と思った。

緑川ルリ子役の森川千恵子は、目がパッチリとしていて、私の好きな顔立ちだ。

本郷猛のライディング

若い頃バイクに乗っていた私から言わせてもらうと、本郷猛がバイクに乗る姿は危なっかしい。

こりゃ、いつか事故るぞ、という感じでヒヤヒヤする。

たしかに藤岡弘は素晴らしい運動神経の持ち主だと思う。
しかし、わざと車体を左右に振ってケレン味を出す演技は過剰かつ危険だ。しかも路面は滑りやすいダート(=土)

ヘルメット着用が法律で義務化される以前だから、頭まるだし。

ほんと危なっかしい。

仮面ライダーは紳士的

一文字隼人はフリーのカメラマンという設定だ。

こんなフリー・カメラマンなんて居るわけないだろ、と思わずツッコミを入れたくなるような、いかにも絵に描いた「自由人」キャラだ。

軽薄で、陽気で、冗談が好きで、ちょっと不良っぽくて、「べらんめぇ」口調。

ところが、変身して仮面ライダーになると性格が180度変わる。

変身後は、立ち居・振る舞いが紳士的になる。

まさに「仮面=ペルソナ」が変わる訳だ。

そのギャップが、ちょっと面白い。

二周まわって、おしゃれ

2022年の流行は「Y2K」ファッションらしい。

今から20年以上前の西暦2000年前後の流行を指す言葉で、具体的には、

  • 体に張り付くような小さめのTシャツ
  • 股上の浅いジーンズ
  • カラフルなキャンディー・カラー

などを指すらしい。

オヤッサンの喫茶店「アミーゴ」に出入りする時の、緑川ルリ子のオシャレな感じに驚く。
当時の大学のテニス・サークルに居そうな、スポーティーでありながらもお嬢様らしいファッション。

さらに驚くのが、2号ライダーと同時に登場した山本リンダのファッションだ。
チビTシャツ、股上の浅いジーンズあるいはショートパンツ、カラフルでポップな色使い。
まさにY2K。

すわ、山本リンダは西暦2000年からきた未来人か!
と、一瞬思ったが、すぐに逆だと気づいた。

1970年代初頭の山本リンダがY2Kなんじゃなくて、Y2Kが、実は1970年代初頭ファッションのリバイバルだった訳か。

山本リンダ

それにしても、存在感が凄いな。
スラリと伸びた長い脚が眩しい。

都市近郊の風景

戦隊ヒーローは石切り場でアクションをしたがる、というのは有名な話だが、初代仮面ライダーは造成地でアクションをしたがる。

初代ライダーを観ると、この頃の首都近郊が、どれほど急ピッチで宅地造成をしていたかが分かる。

山を切り崩し、谷を埋め、新興住宅地が外へ外へと急速に広がっていった時代。
多摩ニュータウンへの入居が始まったのもこの頃。
仮面ライダーとショッカー怪人が闘っていた同じ造成地で、ひょっとしたら「平成狸合戦ぽんぽこ」の狸たちも闘っていたのかも……なんて妄想をしてみる。

撮影当時すでに造成を終えて住宅地になっていた場所が、50年後の今と殆(ほとん)ど変わらない事にも驚く。

現に、ネットで「仮面ライダー 聖地巡礼」とか「仮面ライダー ロケ地」などで調べてみると、50年前と同じ風景が今も残っていると知れる。

仮面ライダーが放映されていた1970年代初頭は、今の都市近郊の風景が作られた時代だったのだな。
逆に言えば、あれから50年のあいだ、都市近郊の風景は大して変わっていない訳だ。

抜け忍もの

切通理作が、自身の YouTube チャンネルで「仮面ライダーは抜け忍もの」と言っていた。

なるほど、言い得て妙だな、と思った。

もともと日本の変身ヒーローの源流には時代劇があるのだが、その中でも特に仮面ライダーの源流は、山田風太郎が得意とした「抜け忍もの」か。

人間らしい暮らしを求めて、非情な掟(おきて)の忍者組織から逃亡した若い忍者と、組織の命令を受けて彼を追う忍者たちの忍法合戦が、そのまま仮面ライダーとショッカー怪人のアクションになった訳か。

身バレしている主人公

変身ヒーローが何で変身するかと言えば、身バレしたくないからだ。

ところが、ショッカーは仮面ライダーの正体が本郷猛だと知っている。

彼が、立花藤兵衛の経営する喫茶店「アミーゴ」に入り浸っている事も知っている。

冷静に考えれば、どうやっても本郷猛と仲間たちに勝ち目は無い。

何しろ相手は世界各国に支部を持つ巨大な闇の組織だ。
個としての能力がいくら高くても、身バレしている限り、仮面ライダーは長期的には絶対に負ける。

これが、仮面ライダーの設定に関して私が一番気になる部分だ。

やはり主人公の正体は誰にも知られてはいけない。
それでこその変身ヒーローだ。

2023-02-22 04:49