人生の危機について
人生の危機について
長く生きていれば、男にも女にも、精神的な危機が何度か訪れる。
男の場合、『中年の危機』と呼ばれる現象がその代表だろう。
古今東西、この『中年の危機』を扱った文学作品や映画は多い。
代表的な例を言うと『アメリカン・ビューティー』とか。
男が患(わずら)う『中年の危機』の典型は以下のような物だ。
「主人公は今年40歳になる男。
安定した職があり、妻がいて、子供がいる。
去年ローンを組んで郊外に新築の家を買ったばかりだ。
周囲からは、仕事にも家庭にも恵まれた幸せな男だと思われている。
しかしある時、男は思う。
『俺の人生、本当にこれで良いのか?』と。
その思いが主人公の精神を苛(さいな)み、やがて表面上は安定していたはずの彼の人生が、少しずつ狂っていく。
いつしか仕事が上の空になり、ミスが目立つようになる。
妻との関係も冷えていく。
思春期(反抗期)に入った娘は、父親を毛嫌いするようになる。
主人公は孤立し、精神はますます病んでいく」
男の『中年の危機』に相当するアイデンティティ危機は、女の人生にも何度か訪れるのだろうと思う。
ただし、『危機』の訪れるタイミングと理由が、男と女では微妙に異なるようだ。
女は45〜55歳あたりで、相当に大きな精神的・肉体的『危機』に見舞われる。
もちろん、しかるべき医療機関で診察を受ける事も大切だろう。
加えて、もっとも身近な男(夫、息子など)が、女を全力で援助すべきだ。
心に寄り添うべきだ。
そうしないと最悪の場合、カルト組織の魔の手が女に伸びる。そうなってからでは遅い。
男と女は持ちつ持たれつだ。
片方が危機に陥(おちい)ったら片方が支えるのが理想だ。
私がこんな事を書いても、個人の自由独立や男女平等を重視する若い読者は納得できないかもしれない。
年寄りの世迷言(よまいごと)だと思われても、それはそれで仕方が無い。
世迷言ついでに言わせてもらえば、人生には何度か(男にも女にも)精神的な危機が訪れる(場合がある)
そうなった時の心の準備を、平時から多少しておいた方が良い。
自分自身がそうなった時の準備はもちろん、身近な人・大切な人がそうなった時の心構えをしておいた方が良い。