映画「立ち去った女」を観た。
映画「立ち去った女」を観た。
dtvにて。
監督 ラヴ・ディアス
出演 チャロ・サントス・コンシオ 他
ネタバレ
ネタバレがあります。ご注意ください。
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5回繰り返したからセーフ。
ひとこと感想
最初から最後まで、とにかく画面がビシッと決まっている。
人物、小道具、背景の配置。カメラの角度や距離。
そして、特筆したいのが露出(=画面に取り込む光の量)だ。これがまたビシッと決まっている。それが美しさにつながっている。光と陰の美しさを堪能するための、あえての白黒なのか。
音も良い。BGMがほとんどなく、風の音や通りを走る車の音などの環境音だけが後ろで聞こえているのだが、それが美しい画面をさらに引き立てている。
ひとことで言うと、画面の美しさを4時間たっぷり堪能できる映画だ。
昨今のエンターテイメントにありがちな「カメラをどんどん動かして、カットを多くして、アクロバティックな演出で画面をスタイリッシュに作り上げる手法」も、それはそれで良いとは思うが、本作には、そうした「スタイリッシュ系の映画」では味わえない気持ち良さがある。
ストーリーは、自分を罠にはめた男に復習するため旅に出る女、というモンテクリスト伯のような典型的な復讐譚だ。
物語の最初と最後に、一種のブックエンド形式で、主人公の自作とおぼしき童話というか寓話が語られる。
「暗い部屋で偽りの夢をむさぼっていた男が、真実と向き合うことを決意し、部屋の外の世界へ出て行く」
という話だ。
映画の始まりにおいては、この寓話が、主人公を冤罪に陥れた真犯人でありながら、別件で逮捕されて主人公と同じ刑務所に収監され、主人公の親友として生き続けてきたペトラに自白を決意させる。
映画の終わりでは、この寓話が、「日本で成功して自分の舞踏団を持つ」という叶わぬ夢を見続けながらその日暮らしの路上生活を続けている、てんかん持ちの女装の踊り子ホランダが、主人公の代わりに殺人を犯し「男に戻って」自ら刑務所に服役する、という選択と呼応している。
ところが、映画の最後は「首都マニラで行方不明になった息子を探す」という叶わぬ夢を追い続けて疲弊し発狂した主人公のカットで終わる。
偽りの中で生きるのをやめて自ら破滅するという決着を選んだペトラとホランダに対し、逆に、主人公は旅路の果てに自ら偽りの夢の中へ埋没し、最後は気がふれてしまうという皮肉なエンディングだった。