1.
私は高校生で、バドミントン部だった。
ある土砂降りの放課後、私と仲間の部員たちは練習試合をしに、ある町の高校を訪ねた。
ところが、先方の高校の先生は「この学校にバドミントン部は無い」という。「別の高校と間違えたんじゃないか」とも言われた。
この町には、他に高校が二つあるらしい。
「どうしようか」と仲間の部員の一人が私に聞いた。
私は通りかかった生徒に、その、他に二つあるという高校の場所を聞いた。
生徒は窓越しに見えるゴルフ用品量販店のビルを指さした。
窓の外は相変わらずの土砂降りで、向こうにかすかに十階建てのビルが見えた。屋上にゴルフ用品の金ぴかの看板が掛かっていた。
下の階が学校で、上の階がゴルフ用品店だという。
いずれにしろ、この土砂降りのなか歩いて行ったら、部員全員ずぶ濡れで練習試合どころじゃないな、と、私は思った。
それに、今いる学校の他に、この町には高校が二つあるという。あのゴルフ用品店の高校以外に、もう一つあるということだ。
ゴルフ用品店まで歩いて行って、その高校も間違いだったとなると、さらに別の高校まで土砂降りの中を歩かなくてはいけない。
そのとき、なぜか「もう一つの高校」には、絶対に行っては行けないような気がした。
「どうする?」
隣に立っていた部員が、もう一度、僕に
どうやら僕はバドミントン部の部長らしい。
周りを見ると、さっき通りかかったこの学校の生徒は、もう居なかった。
それどころか、人の気配が全くしなかった。
僕らの学校からバドミントン部の部員男女合わせて十人ほどでこの学校へ来ていた。
しかし、私と、私の隣にいる仲間の部員(副部長か?)の二人以外、バドミントン部員たちは、いつの間にか消えていた。
仲間も、この学校の生徒たちも、教師たちも、誰も居なかった。
節電のためか、校舎の電灯は一つも点灯していなかった。
ガランとした薄暗い放課後の学校には、私と副部長しか居なかった。
外は相変わらずの土砂降りだった。
湿った空気が、電灯の