映画「処刑男爵」を観た
映画「処刑男爵」を観た
脚本 ヴィンセント・フォートル
監督 マリオ・バーヴァ
出演 アントニオ・カンタフォラ 他
ネタバレ注意
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ひとこと感想
ゴシック・ジャッロというかジャッロ・ゴシックというか、ジャッロ映画お得意の血みどろエログロ描写と、「ヨーロッパの古城」「過去の因縁」「墓場から蘇る城主」といったゴシック趣味を掛け合わせた映画。
原題は「BARON BLOOD」すなわち「血みどろ男爵」
おしゃれ
そんな血みどろゴシック映画に「おしゃれ」などという形容は相応(ふさわ)しくないと思うが、実際、おしゃれなんだからしょうがない。
いや、もちろん200年の眠りから目覚めた処刑男爵がおしゃれな訳ではない。
この映画の公開は1972年。
当時のヨーロッパの街並み、通りを行き交う自動車、建物のインテリア、そして何より登場人物たちの服装が、飛んでもないほどに素晴らしく「おしゃれ」なのだ。
日付が変わると登場人物たちは皆、昨日と違う服装で現れる。
それどころか、昼間の服装と夕食の服装が違う。昼と夜でいちいち服を着替える。
いちいち着替えた服の全てが、女も男もおしゃれ。
飛んでもなく、おしゃれ。
街の風景にしろ、人物の服にしろ、とにかく1970年代初頭らしさ全開で、それだけで目が楽しい。
ストーリーについて
お世辞にも良いとは言えない。
どぎつさ重視・整合性は度外視な、いつものジャッロ映画。
ラスト・シーンに理屈を超えた凄みがあって、そこだけは感動した。
テーマ曲
これまた1970年代初頭らしく、女性コーラスが「パッパ、パヤッパー」と陽気に歌う曲だ。
この陽気な曲を背景に、主人公のアメリカ青年がジャンボ・ジェットに乗って大西洋を渡りオーストリアに到着するところから、物語は始まる。
なるほど、アメリカの現代的な陽気さを態(わざ)と強調しておいて、これから始まる古城での惨劇との落差を付ける演出だな、と思った。
ところが、この陽気な「パヤッパー」が、陰惨なラスト・シーンの直後、古城の上で高笑いする魔女の声に重ねられて流れる。
ちょっと不意を突かれる演出だ。
この変な感じが、「古城の因縁話なんて、しょせん絵空事ですよ〜、しょせん作り話ですよ〜」という作り手の遊び心のような気がして、それがまた、おしゃれに感じられた。
ただ単に何も考えていなかっただけ、という可能性も否定できないけど。
何しろジャッロ映画だからね。
ボーイング747
世界の航空会社が今でも主力旅客機として使っているボーイング747通称「ジャンボ」って、50年前には既に空を飛んでいたのか。
まあ、F15戦闘機の就役も1972年だからな。
半世紀を経た今でも、世界中の空軍が使っている現役機だ。
飛行機は最先端の乗り物というイメージが強いけれど、最先端って事は、すなわち莫大な開発費を要するって事だ。
開発に成功した機体は可能な限り延命して、初期コストを回収しなければいけないのだろう。
最先端だからこそ長いモデル・ライフが求められるという矛盾した乗り物なんだな。飛行機って。
スラッシャー映画
やっぱりイタリアのジャッロ映画って、アメリカで1970年代後半〜80年代に隆盛を極めたスラッシャー(スプラッター)映画のご先祖様なんだなぁ、と、あらためて思った。
マリオ・バーヴァという監督
前時代的なゴシック趣味や血なまぐさい連続殺人ものが得意な印象のマリオ・バーヴァだが、ひょっとしたら、彼の本質は「都会派おしゃれ監督」なのかも知れない。