青葉台旭のノートブック

「魔女の暦」を読んだ

「魔女の暦」を読んだ

作 横溝正史

角川文庫版

収録作(丸カッコ内は、初出年)

  • 魔女の暦(1958)
  • 火の十字架(1958)

横溝正史の小説について

横溝正史の作品は大きく以下の三つの時代に分けられると思う。

  1. 戦前
  2. 終戦直後(昭和20年代)
  3. 高度経済成長期(昭和30年代)

舞台は、大きく二つに分けられる。

  • 田舎
  • 都会

横溝作品の中で最も注目され何度も映画化されているのは、時代が「終戦直後」で、かつ「田舎が舞台」の金田一耕助ものだ。
私も、この時代に書かれた田舎が舞台の金田一ものには、単なる推理小説以上の何かが有ると思う。

対して、高度経済成長期(昭和30年代)の都会(主に東京)を舞台にした作品は、ほとんど注目されていない。
実際に読んでみても、文学として胸に迫る事もないし、推理小説としての驚きも少ない。
あまり褒(ほ)められない出来の作品が多い。

この違いが何処(どこ)から来るのかについて私なりに思うところは有るが、それは別の機会に書きたいと思う。
ひとつ言えるのは、戦後〜昭和30年代に横溝が書いた作品は膨大な数に上るという事だ。
生活のため粗製濫造(そせいらんぞう)的に書き飛ばしていたのかも知れない。

人気の無い「昭和30年代の都会を舞台にした」金田一耕助ものではあるが、2022年の今あらためて読んでみると、これはこれで味わいがある。
そこに描かれた昭和30年代の風俗が、レトロな魅力を醸(かも)し出している。

2022-08-18 00:31