青葉台旭のノートブック

ドラマ「怪談牡丹灯籠」を観た

ドラマ「怪談牡丹灯籠」を観た

U-NEXT にて。

脚本 源孝志
監督 源孝志
出演 若葉竜也 他

ネタバレ注意

この記事にはネタバレが含まれます。

ネタバレ防止の雑談

U-NEXT のサムネイルは「怪談牡丹灯籠」という短いタイトルだが、どうやら放送当時は
「令和元年版 怪談牡丹燈籠 Beauty&Fear」
という長いタイトルだったらしい。

もともとは NHK で放送されたドラマのようだが、私は U-NEXT の都度支払い(いわゆるレンタル配信)で観た。

三遊亭圓朝の「怪談牡丹灯籠」を kindle で読み、映画化作品も観たくなって U-NEXT を検索したらこれに当たった。

この他にも U-NEXT には「NHK オンデマンド」と称する番組が多数登録されていた。
あとで色々とスコップしてみよう。

ちなみに「スコップする」とは、ウェブ小説界隈の隠語で「膨大なコンテンツの中から自分の好みをさがす」という意味だ。
おそらく、地面を掘って金の鉱脈を見つけるようなもの、という喩えだろう。

以上、ネタバレ防止の雑談でした。

以下、ネタバレ。

ひとこと感想

わりと面白かった。

少々の改変や省略はあるものの、大まかな話の筋は原作に忠実だった。

以下に、良かった点・イマイチだった点・そのほか気づいた点を順不同でつらつらと書く。

良かった点その1:しっかりとセットが組まれていた

室内セット・屋外セットがしっかりと組まれていた。まあ時代劇なんだから当たり前といえば当たり前だが。

クライマックスの橋の決闘シーンも、おそらく橋を丸ごと作ったのだろう。

お露が住んでいた河畔の別宅はセットだろうか? それとも実在する建物だろうか?
まさかCGではないと思うのだが。

しっかりとセットを組んで作り込んだ物語世界は、それだけで目の保養だ。
眼福、眼福。

良かった点その2:衣装と小道具

衣装が鮮やかで綺麗(きれい)だ。
「薄汚れていない」という意味ではリアル志向じゃないのかも知れないが、この物語自体が一種のファンタジーだと思えば、綺麗な衣装で正解だったと思う。

私は江戸の専門家ではないので確かなことは言えないが、小道具類も良く作り込まれていたと思う。

良かった点その3:出演者

出演者たちは皆とても存在感があって良かった。

時代劇に有りがちな態(わざ)とらしさが無かったし、若い演者に有りがちな「何をやっても現代っ子にしか見えない」という事も無かった。

良かった点その3:人体切断

若き日の飯島平左衛門が黒川孝助の父を斬殺するシーンで左肩から胸まで断ち割られる所とか、胸や腹を刀で突き刺して、その切っ先が背中から突き出る所とか、特殊効果の粗(あら)が無く、迫力があった。

良かった点その4:空中の蛾を切る

源次郎が空中の蛾を切る特撮(CG)が良かった。

総じて、本作品の特撮(CG含む)は、必要にして充分なレベルだった。

イマイチだった点その1:カメラ・アングルと編集

カメラ・アングルと編集は、もっと頑張れたと思う。

別に酷いレベルという訳でもないが、これだけの大掛かりなセット、豪華な衣装・小道具、存在感のある役者たちを揃えたんだから、それに見合うように、もう少し頑張って欲しかった。

イマイチだった点その2:幽霊まわりの演出

お露とお米の幽霊シーンの演出は、正直、残念な出来だった。

特撮技術そのものの問題ではない。
前述の通り、特撮そのものの技術力は必要にして充分なレベルにあったと思う。

問題は、その見せ方だ。
どこかで見たことのある使い古された表現ばかりだった。

  • 目が金色に光る
  • ボイスチェンジャーで声色を変える
  • 歯を剥き出しにして「ガァーッ」と吠える(そこに波動のような効果が被さる)

幽霊の表現がこれでは、あまりに発想が貧困だと言わざるを得ない。

操演&CGでジャンプして塀を越えたり、仏像を見せられた幽霊が操演&CGで後ろに飛び退いたりという表現も、もうちょっと何とかならなかったのかと思う。

極めつけは、お露が新三郎を取り殺すクライマックス・シーンだ。
いつの間にか牙を生やしたお露が、新三郎の首筋にガブリと噛み付く。
……いや、いや、いや、それ絶対に変でしょ? 何で日本の幽霊が唐突にドラキュラになってるの?
意味不明。

繰り返すが、特撮技術は充分なレベルだ。
役者たちの演技も素晴らしい。

問題は監督だ。
監督の演出アイディアが有りがちで安易で貧困だった点が残念だ。
もう少し知恵をしぼって欲しかった。

そのほか気づいた点

昔、テレビの水戸黄門がフィルム撮影からビデオ撮影に切り替わった時、どうしても違和感が拭(ぬぐ)えなかった。
当時は、「やっぱ時代劇はフィルムだよな」などと聞いた風な口を叩いたものだ。

……時代は下って2022年。

当然、この「牡丹灯籠」も全編デジタル撮影の筈だが、違和感は無かった。
むしろ、高精細で鮮やかな映像が心地よかった。

この違いは、技術の進歩によるものだろうか? それとも受け手側がデジタルに慣れたからだろうか? それとも映画やドラマの作り手たちがデジタル時代劇のノウハウを蓄積した結果だろうか?

2022-07-19 09:39