青葉台旭のノートブック

日記のような小説、小説のような日記

日記のような小説、小説のような日記

12月31日(木)

夕方、近所のスーパーで蕎麦を買った。
豚ロースのブロックが安かったから、それも買った。
今日は、これで『豚ロース南蛮蕎麦』を作ろう。
鴨南蛮蕎麦の『鴨』を『豚ロースの厚切り』に置き換えるだけで良いだろう。
さて、どんな味になるだろうか。

-----

スーパーから家までの帰り道、夕暮れの空が美しかった。
凛と冷たく澄んだ空気を通して見る街並みは、どこまでも輪郭線が細く明瞭で、その美しさが目に刺さるようだった。
1年の最後の日に、今年1番美しい東京の空を見られた。
ありがたや、ありがたや。

-----

今夜食べる蕎麦と一緒に、明日食べる大福餅もスーパーで買った。

子供の頃は、確かに年越しは大イベントだった。
しかし大人になると同時に、1月1日は単に12月31日の翌日という事でしかなくなり、12月31日は単に1月1日の前日という事でしかなくなった。
大昔のローマの皇帝が、連続する日々に対して勝手に区切りを制定したに過ぎないと思うようになった。

そして現在、私の心境も変わった。

やはり、年末くらいは年末らしく、元旦くらいは元旦らしく過ごそうと思っている。

年をとって、やっと気づいた。
ひとりの人間が経験できる大晦日の回数にも、元旦の回数にも、限りがあると知った。

若い時には、その事に気づかなかった。

-----

鴨南蛮の『鴨』の代わりに『豚ロース厚切り』を使った『豚ロース南蛮蕎麦』を作って食べた。

それほど美味しくもなかった。

失敗だったか。

-----

それでは皆さん、良いお年を。

(2020年)

2020-12-31 18:40