日記のような小説、小説のような日記
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12月10日(木)
朝食
コーヒー、砂糖、お粥。
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腹を壊した。
今日、何度もトイレに駆け込んだ。
昨日は、お粥しか食べていないはずなのだが、何が悪かったのだろう?
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東京マルイのエア・コッキング・シリーズは、1980年代半ばから35年も続いている非常に息の長いトイガンのシリーズだ。
私の記憶に間違いが無ければ、シリーズ第1弾がルガー・P08で、ワルサー・P38が第2弾だったように思う。
残念ながらルガー・P08は廃盤になってしまったようだ。
現在、製造・販売されている中では、ワルサー・P38が一番古い銃という事になる。
当時は気づかなかったが、最近ウェブで色々調べているうちに、この東京マルイ製P38が、コストダウンのためにP08と内部メカを共有していると知った。
その皺(しわ)寄せが外観に現れていまっている事も知った。
P08のメカを無理やり組み込んだせいで、本来のP38から大きくかけ離れたフォルムになっているというのだ。
確かに写真を見ると、スライドがニュッと後ろに突き出ていてルガー・P08に似た形になってしまっている。
2020年現在、このP38を敢えて買う人は、そういう部分も含めてレトロ感・ノスタルジック感を楽しんでいるのだろう。
少年たちは、映画やテレビに出てくるヒーローが持っている銃に憧れる。
このトイガンが発売された1980年代半ば、日本ではスミス・アンド・ウェッソン・M29、同M19、コルト・パイソンなどのリボルバーが人気だったように思う。それぞれ、ダーティー・ハリー、次元大輔(ルパン三世)、冴羽獠(シティ・ハンター)が愛用しているという設定の銃だ。
そしてオートマチック・ピストルでは、何と言ってもルパン三世が持っていたP38が、コルト・ガバメントと人気を二分していた。
あれから35年。
ルパン三世のポップ・アイコンとしての力も流石(さすが)に衰えてきているように思う。
考えてみれば、ルパン三世は『1970年代』という時代の空気感を強烈に感じるアニメだった。
逆に言えば、2020年現在、もはや『ルパン三世』というアニメは、『あえて1970年代のレトロ感を楽しむ』というメタな文脈無しでは成立できないと感じる。
2000年ごろだったと思うが、ちょっとしたルパン三世ブームが起きたと記憶している。
その当時からして既に、ルパン三世というアニメに色濃く映された『1970年代的なもの』を、そのレトロ感も含めて今風にリバイバルして楽しむ、という消費のされ方をしていた。
それも、もう20年前の話だ。
『あえてレトロな雰囲気を楽しむ』というメタ的な消費をするためには『子供時代、誰もが一度は夢中になったあのキャラクター』という共通の原体験が必要だ。
しかし、今の若い人に『ルパン三世』と言ったところでピンッと来ないと思う。「名前だけは知っています。お爺さん世代が若い頃に夢中になっていたアニメですよね? 僕自身は一度も観たことがありませんけれど……」などと言われるのが関の山だろう。
まあ良し悪しだとは思うが、長いあいだ日本人に刷り込まれていた『ワルサー・P38はルパン三世の愛銃』という強い結びつきのイメージが無くなった、現在は通用しなくなったというのも、単体でP38を愛(め)でやすくなったという意味では歓迎できる部分もあると思う……ワルサーP38そのもののレトロ感を純粋に楽しむ、という意味で。
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またトイレに駆け込んだ。
ダメだ……腹の下(くだ)りが収まらない。
(2020年)