マストドンについて。
2017-04-16 07:32 [ウェブサービス]
マストドンについて。
マストドン・サーバー2か所に登録してみた。
Pawoo
https://pawoo.net/@aobadai_akira
mstdn.jp
https://mstdn.jp/@aobadai_akira
とりあえず物珍しかったから登録してみただけだが、ローカルタイムラインと連合タイムラインの概念とか、 何となく興味が湧いたので調べてみた。
はじめにOStatusあり
どうやらマストドンの「ローカル」と「連合」という概念は、このフリーソフトが基盤にしているOStatusという通信プロトコルに 由来するらしい。
OStatusというのは、私流に解釈させてもらえば
「ツイート・トランスファー・プロトコル」
という事になるか。
ミニブログに投稿した文章……つまりツイッターで言うところの「ツイート」……を、異なるサーバー間で
やり取りするための仕様というわけだ。
これにより、別のサーバーに投稿されたミニブログ記事(ツイート)を自分のサーバーに取り込む事が出来る。
複数のサーバーが互いの記事(ツイート)をやりとりするグループを形成することを称して、「連合」というらしい。
メールを転送するプロトコルとしてSMTPがあり、そのSMTPを送受信するサーバープログラムとして 「sendmail」があるように……
HTMLを転送するプロトコルとしてHTTPがあり、そのHTTPを送受信するサーバープログラムとして 「Apache」があるように……
ファイルを転送するプロトコルとしてFTPがあり、そのFTPを送受信するサーバープログラムとして 「ftpd」があるように……
ミニブログ記事を転送するプロトコルとしてOStatusがあり、そのOStatusを送受信するサーバープログラムとして 「Mastodon」がある。
という事だ。ちなみに、OStatusプロトコルはW3Cが管理しているオープンな規格だ。
大事なのは、このOStatusプロトコルであって、マストドンは単にその実装の一つという事に過ぎない。
マストドンどうしが形成するOStatusネットワーク=「連合」に参加するためにはOStatus送受信サーバーであれば良いわけで、
別に、それがマストドンである必要はない。
メールサーバーと称するソフトウェアが何種類もあるように、ウェブサーバーと称するソフトウェアが何種類もあるように、
将来OStatusサービスという概念がメールやウェブと同じくらい広く浸透し受け入れられれば、
マストドン類似のOStatusサーバーは何種類も出てくるだろう。
2017年4月現在の「マストドン・ブーム」に対する批判をいくつか
グーグルで「マストドン」と検索をかけると、2017年4月現在のマストドン・ブームに対する批判というか、 警鐘を鳴らす記事もちらほら見える。
- ツイッターやフェイスブックなどの有名企業が運営するサービスとちがい、マストドンは誰でもサーバーを立てられる フリーソフトウェアである。悪意を持った人間が立てたサーバーにうっかりメールアドレスとパスワードを入力すると、 それを悪用される恐れがある。
- OStatusや、その最初のサーバー実装であるGNU Socialが掲げているのは「フェイスブックやツイッターなどの大手企業が 独占支配するSNSからユーザーを開放し、管理社会から市民を救い自由を取り戻す」という崇高な理念と使命だ。いち大学院生の 立てたサーバーや、イラスト投稿SNS運営会社に何万人ものユーザーが群がる現状は、その理念を汚すものだ。市民ひとりひとりが 独自のドメインとサーバーを持ち、企業に支配される事なく自由に発言することこそがOStatusなどの分散システムの最終目標だ。
昨今のマストドン・ブームに対する批判は、集約すると上の2点になるだろうか。
……しかし……まあ大筋では、そうなんだろうけどさ……と、私は思う。
その1。「自分で自由にサーバーを立てられるということは、悪意のあるサーバーにうっかり登録する可能性がある」という指摘に対する反論。
まあ、そうなんだろうけど……でも、それって、ほとんどのウェブサービスに言える事だよな。フェイスブックだってツイッターだって 初期のブログサービスだって何だって、最初は海のものとも山のものとも知れない連中が立ち上げたサービスだったんだろう。
しかし、その「危険かもしれない」サービスに登録した「最初の一人」が必ず居たわけだ。
全てを信じるのは馬鹿なお人よしだが、全てを疑っていては家から一歩も出られない。
アーリーアダプターを自任するなら「悪意のありそうなウェブサービス」と「無害なサービス」を嗅ぎ分ける能力を 持って然るべきだと思う。
また、他のSNSやブログなどのウェブサービスの歴史から推測するに、おそらくレイトマジョリティーが参入してくるころには 「はてなストドン」とか「アメーバ・ピクトドン」とか「ライブドアトドン」とか、そんな感じで取りあえず信用できる企業が参入していて、 そういうところに登録しておけば取りあえず間違いない、という状況になっているのではないだろうか。
それでも、世の中には極端にリテラシーの低い人が一定数いて、そういう人たちを食いものにする悪い奴らも一定数いるから、警告して しすぎということはないが……
その2。「OStatusを基盤とした分散SNSの『大企業からSNSの自由を市民に取り戻せ!』という崇高な理念を昨今のマストドン・ブームは矮小化している。人民よ立ち上がれ! 自分のドメインを持ち自分のサーバーにマストドンをインストールせよ!」という指摘に対する反論。
まあ、そうなんだろうけど……これって、どこかで聞いたフレーズだなと思ったら、ちょっと前にブログを立ち上げようと思ってグーグル検索したときに 見たやつだ、と思った。
「まだ、無料ブログ・サービスで疲弊してるの?」
「独自ドメインにWordpressサーバーいつ立てるの? 今でしょ!」
「本気でブログをやっている奴は、みんな独自ドメインにWordpress立ち上げてるよ……はてなであれアメブロであれライブドアであれグーグルであれ、 企業が運営するブログ・サービスに自身のブログを持つという事は、そのサービス運営企業の支配下に入るという事だ。 それじゃあ本当の自由は得られないし、ある日突然、運営側の都合でアカウント追放されたり、サービスそのものが終了したり、 運営会社そのものが倒産する可能性だってある。そしたら、全部パーよ」
……というような文章を、グーグルで「ブログ」というワードで検索したときに嫌というほど目にした。
この意見に大筋で同意しつつも、結局私が選んだ方法は「独自ドメインに静的サイトを構築しつつ、はてなブログに同時投稿する」という方法だった。
どうしてもWordpressを自分で管理する気になれなかったのは、やはり、
24時間動き続けるサーバー・プログラムを管理・運営するのは自分の手に余ると思ったからだ。一言でいえば「面倒くさい」
別に、アフィリエイトにも興味無かったし、運営側に睨まれるようなエロサイトにも興味は無かったから、はてなにBANされる可能性と、自前サーバーの 面倒くささを天秤にかけたとき「自前のサーバーは要らないな」と思った。
もちろん、何がなんでもサービス運営会社の支配下でツイートするのが嫌な人は自前でマストドン・サーバーを立ち上げれば良い。しかし、
「どうせツイートなんて、書いてる俺自身にとっても屁みたいなもんよ。そんなものにいちいちサーバー管理のコストなんて払ってられるか。 アカウントBANされたら? そしたら、別の会社が運営するサービスで屁をこくだけさ」
……という選択も、それはそれで尊重されるべきだ。
何にせよ、選択肢は多い方が良い。
ウェブ・サービスの将来
かつて、1980年代初め、アップル社は初代マッキントッシュをデビューさせるにあたって「IBMの支配する管理社会からコンピューターを使う自由を取り戻す」 という内容のテレビ・コマーシャルを流し、同じころ、今は無きサン・マイクロシステムズは「ネットワークこそがコンピューター」というキャッチフレーズを 使っていた。
時代は下って、マストドンなどのOStatusサーバーは「decentralized=非中央集権化」を標榜しているらしい。
もともとインターネットは、アメリカのどこかの都市が核攻撃を受けても通信インフラに致命的なダメージを受けないように 「中心の無い=急所の無い」ネットワークとして、米ソ冷戦時代に生まれたものだ。
そもそもの成り立ちとして、インターネットは「decentralized=非中央集権的」であり分散システムを目指して構築されたわけだ。 だからネット上の色々なサービスが分散化していくのは当然と言える。
分散化されるという事は「どこか1つのサーバー=どこか1つの企業」の権力が無くなって分散システムの1メンバーに成り下がるという事だから、
その企業は収益が落ちるだろう。
OStatusがらみで言えば「SNSサービスのコモディティ化」が進行する。
それでも、金銭面やらプライバシーの安全面で独占的サービスの方が効率が良い、すなわち市民にとっても利便性が高い分野は、独占的サービスが残るだろう。
個人的には、フェイスブック代替の技術を誰か早く作ってくれないかなと思う。堅牢で、安全で、安心なやつを。
フェイスブックの、あのゴチャゴチャした画面は、見ているだけで気分が萎えて投稿する気が失せる。
ああ、フェイスブックの真の強さは、機能じゃなくて「世界中のデファクト・スタンダードになってしまった」という既成事実か……