シリーズ映画の「リブート」……「シン・ゴジラ・パート2」は作らない方が良い。
シリーズものの映画に「リブート」という言葉が使われ出したのは、ここ10年くらいの話だろうか。
要するに、リブートとは、長期にわたって何度も映画化されたシリーズものに対して、「それまでのシリーズは無かったことにして、新たに一からシリーズを始める事」である。
シリーズものの問題点
シリーズものに関しては、大きく三つの問題点がある。
- マンネリ化。
- 一つの世界観で作られ続けた結果、世界観そのものに無理が生じる事。
- 主演俳優の高齢化。
一つ目の「マンネリ化」については、言うまでもないだろう。シリーズを作り続けるという事、また見続けることは、作る側も、見る側も、そのシリーズにおける「連続した、おなじみのキャラや世界観」を期待し、期待されるという事だ。しかし、それは「毎度おなじみのマンネリ化したストーリー」が展開されるという事であり、要は、飽きる可能性があるという事だ。
二つ目の「一つの世界観で作られ続けた結果、世界観そのものに無理が生じる」というのは、例えば、ダイ・ハードにおいて「何で毎度毎度ブルース・ウィリスばかりが、『偶然』テロの現場に居るのか?」という疑問だ。別の例で言えば「何で、毎年毎年、お正月になると怪獣が日本に上陸するのか」「そんなに毎年毎年、怪獣に破壊され続けて、日本は大丈夫なのか」という、観客がどうしても考えてしまう「メタ的な」疑問の事だ。
三つ目の「主演俳優の高齢化」は、例えば、大人になってしまったダニエル・ラドクリフは、もう10歳の頃のハリーポッターは演じられない。という問題だ。あるいは、長命という設定のはずのバルカン人スポックだが、演じるレナード・ニモイは、シリーズが進むにつれて、どうしても老いて行ってしまう、という問題だ。
そこで、リブート。
上のような問題をはらんでる長期シリーズ物だが、じゃあ、シリーズを止めてしまえば良い、という訳にもいかない。
長期にわたって興行収入を稼いでくれるヒーローは、広い映画界にもそれほど多くは無い。主演俳優が老いてしまったからと言って、映画会社としては、まだまだ稼げるシリーズをそう簡単にやめる訳にもいかない。
大人の事情というやつだ。
そこで、定期的にリブートする。
007シリーズは、その長い歴史の中で何度も主演俳優が交代している。
バットマンも、主演俳優を変える度に、今までのシリーズは無かったことにして、ブルース・ウェイン少年の悲惨な過去から、正義の味方として立ち上がるまでを、いちいち最初から描いている。
スパイダーマンなんかもそうだろう。リブートする度に、高校生ピーター・パーカーが、クモに刺される所から始める。
作る側も、見る側も「今までのシリーズは無かった事にして、また最初から楽しもう」という暗黙の了解で映画を作り、映画を観る。
そして「ゴジラ」だ。
13年の歳月を経て、今回の「シン・ゴジラ」も「リブート・ゴジラ」として作られた。
「シン」という言葉には複数の意味が込められているらしいが、当然、「新=リブート」という意味も含まれているだろう。
本来、怪獣映画はシリーズ化に向かない。まして、ゴジラはその中でも特別、シリーズ化に向かない怪獣だ。
「シン・ゴジラ」の総監督、庵野秀明もしばしばコメントしているように「怪獣映画の面白さは、結局、1954年の初代ゴジラに集約される」
最初にして、至高。それが、1954年の初代ゴジラだ。
何故か?
私は、そもそも「ゴジラ」というキャラクターが、特別際立った存在であるがゆえに、シリーズ化を拒むところがあるのだと思う。
先に述べたが、ゴジラという「絶対的・圧倒的であるべき存在」が、何度も何度も、この日本に、この地球に現れるというのは、そもそも世界観として、おかしい。
初代ゴジラは核兵器の象徴であるというのは、良く言われる話だ。すなわち、ゴジラがシリーズ化されるという事は「日本(東京)が何度も核兵器の被害にあう」という世界観を容認するという事だ。そんな事が、はたして可能なのか?
実際、初代ゴジラの翌年に作られたシリーズ二作目「ゴジラの逆襲」において、すでにゴジラと新怪獣のアンギラスからは、初代ゴジラの持っていた「圧倒的な存在感」「核兵器あるいは東京大空襲あるいは戦争そのものの象徴という要素」は失われていた。「よくある普通のモンスター」程度に存在感がガタ落ちしている。
ゆえに、今回13年ぶりの「シン・ゴジラ」において、庵野総監督を始めとした製作者は、ゴジラを「リブート」した。
「シン・ゴジラ」を見た私の感想は、後ほど書くが、ひとことで言えば「たいへん面白かった」
13年という歳月を経て、製作者側がシリーズをリブートしたのは大正解だったと思う。
さて、最後の大問題だ。「来年、『シン・ゴジラ・パート2』を作るべきか?」
ファンの間では、早くも続編の期待が高まっていると聞く。
しかし私は、こと怪獣映画に関して、まして怪獣の中の怪獣、怪獣王「ゴジラ」に関して、安易なシリーズ化は望んでいない。
ゴジラをゴジラたらしめている「絶対性」と「シリーズ化」は相反するからだ。
「シン・ゴジラ」が「シン・ゴジラ」として成功するためには、前作公開以後の13年という歳月が、「ゴジラという映画」にとっても、われわれ日本人にとっても、どうしても必要だった。
考えても見てほしい。
果たして、前作「ゴジラ・ファイナルウォーズ」の翌年に、「シン・ゴジラ」という映画が成立しえただろうか?
私個人は、もし次のゴジラがあるとすれば、また十数年以上の時を経て、その時の日本と日本人の置かれた状況を踏まえた「リブート」であって欲しいと願う。
野球には「先発投手のローテーション」という概念がある。
つまり、毎日おこなわれる試合の中で、チームに複数の先発投手がいて、それが「中3日」とか「中4日」とか間を置いて、交代交代試合に出場するというシステムだ。
そろそろ、ガメラのリブートも良いのではないだろうか?
平成シリーズの三作目「ガメラ3 邪神覚醒」が1999年だから、シリーズが終了してからのインターバルはゴジラより長い。
そろそろガメラのリブートも考えていい時期なのではないか。
ガメラ・シリーズは東宝ではなく角川映画(旧大映)の制作だが、平成シリーズ以降の配給は東宝だったはずだ。ゴジラのいない年度の、ゴジラと同じ映画館のプログラムに組込めるはずだ。
そもそも怪獣とは、シリーズ化にそぐわない「一度だけの存在」ではあるが、その中では、ガメラは比較的シリーズ化耐性が高い。
平成シリーズで確立された「太古の超文明によって、地球環境の守り神として創造された存在」という多分に「正義のヒーロー」の要素を持ったガメラは、怪獣の中では「シリーズ化耐性」が高い。見せ場を「地球を守るため、敵怪獣と闘う」というヒーローものの構図に落とし込めるからだ。
アメリカ版ゴジラは、平成ガメラ・シリーズを踏まえて、ゴジラのシリーズ化を狙っている。
2014年のアメリカ版ゴジラは、意図的に、ゴジラに「平成ガメラ」のキャラクターを持たせ、シリーズ化への意欲満々だ。
詳しくは、以前の私の記事を読んでほしい。
それを「ゴジラ」と認めるかは、人それぞれだが、アメリカ製の映画でもあるし「同姓同名の別人」と考えれば良いだろう。
既に、かの地では「キングコング対ゴジラ」の企画さえあるという。
本家ゴジラ、ガメラ、アメリカ版ゴジラで、一種のローテーションを組んではどうか。
つまり仮にAという東宝系の一番館があったとして、その映画館で毎年夏休みなりお正月に大作映画を上映するという既定プログラムがあったとして、そこに毎年ゴジラ・シリーズをかけるというのは、ゴジラという怪獣をいたずらに消費し陳腐化する事でしかなく、愚策と言わざるを得ない。
言ってみれば、金の卵を産む怪獣を、いたずらに疲弊させ、卵を産めなくしてしまうようなものだ。
あるいは、野球のエース・ピッチャーに連日連投させて、せっかく剛速球を投げられる肩をわざと壊してしまうようなものだ。
だから、ローテーションが必要だ。
本家ゴジラ、ガメラ、アメリカ版ゴジラというローテーションはどうだろうか。
いや、シリーズ化に対する耐性を考えると、
- 本家ゴジラはシリーズ耐性が低い。
- ガメラはシリーズ耐性が比較的高い。
- 実はガメラ的なキャラクターであるアメリカン・ゴジラはシリーズ耐性が比較的高い。ハリウッドは、アメリカン・ゴジラをシリーズ化して大儲けしたいのだろう。意図的にゴジラをガメラ的キャラクターにして、シリーズ耐性を高めている。
という事になる。それを踏まえて、
本家ゴジラ、ガメラ、アメリカン・ゴジラ、ガメラ、アメリカン・ゴジラ、ガメラ、アメリカン・ゴジラ、本家ゴジラ(リブート)……
という感じのローテーションが良いかもしれない。
そろそろ東宝ニューフェースのデビュー時期ではないだろうか。
それでも、この三匹では、本家ゴジラの次の出現タイミング(最低でも十年は待つべき)の間を埋めるには心もと無い。
ゴジラでも無い、ガメラでも無い、全く新しい「東宝ニューフェース」の怪獣をデビューさせても良い時期かもしれない。
過去においても、ゴジラ以外の怪獣が主役を張った映画は何本もあった。ラドン、バラン、モスラ、フランケンシュタインの怪獣(サンダとガイラ)、ドゴラなどだ。
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