1.
6月は不思議です。
夏なのに本当の夏より暑くないのです。
一年でいちばん日が長いのに
おてんとう様は雲の上にいるので見えません。
ときどき雲が晴れて
おてんとう様が顔をだします。
そんな日は空が青くて
ああ、もう夏なんだなあと思ってしまいます。
でもその次の日は、また雨です。
さらさらと、雨がふり続いています。
屋根と、壁と、道路のコンクリートが水に当たってひやひやと
雨の日でも目の前の空気は明るくてきらきらときれいです。
窓ぎわの机に広げたレポート用紙のまえに座って
ぬれた壁と
ぬれた木の葉と
きらきらひかる
ぬれた空気をながめながら
万年筆を回します。