こんな夢を見た。

1.

右上の犬歯に違和感を感じて、夜中に目が覚めた。
目が覚めると、いつのまにか昼だった。

家の中をうろついて、誰か居ないかと探す。
誰も居ない。

しかた無く、町へ出て、父の職場へ向かう。
僕の歯を見てくれと、父に言うと、
「いま忙しいから帰れ」と言われた。

しかた無く、母の職場を訪れる。
僕の歯を見てくれと、母に言うと、
「いま忙しいから帰れ」と、父と同じことを言われた。

しかた無く、あても無く、町を彷徨さまよった。
通りの向こうから、同級生が歩いてきた。
確かに、同じクラスの生徒だが、今はもう、名前も思い出せない。

その名前の無い少年をつかまえて、
「俺の歯を見てくれ」と
大きく口を開ける。
口の中の犬歯がグラグラする。

「おまえ、その歯、やべぇよ、やべぇよ」
名前の無い同級生が僕に言って、いちもくさんに逃げていった。

しかたが無いので、歯医者に行くことにした。
歯医者に向かう道々、ひまつぶしにグラグラしている犬歯をいじっていると、
犬歯がポロリと抜けた。
あわてたけれど、
犬歯は、地面に落ちなかった。

歯ぐきから伸びた、細いピンク色のぬらぬらした糸でつながって、
口からぶら下がっている。
ぷらんぷらん揺れている。

細いピンク色のぬらぬらした糸は、僕の歯の神経だった。
気持ち悪いので、引っこ抜こうと歯を引っ張った。

ずるずるとした感触が歯ぐきの中でして、
細いピンク色のぬらぬらした僕の神経は、
どこまでも、どこまでも伸びていった。