青葉台旭のノートブック

映画「ロング・グッドバイ」を観た

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脚本 リイ・ブラケット
監督 ロバート・アルトマン
出演 エリオット・グールド 他

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ひとこと感想

レイモンド・チャンドラー「長いお別れ(ロング・グッドバイ)」原作。

ストーリーを追ってしまうと、原作小説の粗っぽいダイジェスト版にしか見えない。

1970年代初めのロサンゼルスの雰囲気を堪能する映画として観ると、面白い。

1970年代初めのロサンゼルスのダウンタウン、ハリウッド、あるいは郊外に造成された上流階級専用の所謂(いわゆる)「ゲーテッド・コミュニティ」、国境を超えたメキシコの田舎町を、風変わりで気だるげな私立探偵が気だるげに漂っている様が心地良い。

話運びにも画面にも不思議な雰囲気があって、リアリズムというよりは、架空のロサンゼルスを舞台にした幻想譚のような感じだ。

ギャングの親分の事務所に乗り込むシーンでは、顔に大怪我を負った女が出てきて場面に緊張感が漲(みなぎ)った次の瞬間、いきなり親分が「俺も全裸になるから、お前も全裸になれ」とか言い出して、服を脱ぎ始める。
「中学時代、俺は更衣室が嫌いだった。当時まだチン毛が生えていなかったからだ」なんて聞きたくもない親分の秘密を聞かされる。
さらに次の瞬間、「金が見つかったから、お前、もう帰っていいわ」とか言い放つ。

エンターテイメント劇というより、不条理劇に近いのかも知れない。

娯楽と芸術の境界線上にあるような映画だった。

「ストーリーを追わずに雰囲気を楽しもう」と早いうちに頭を切り替えたら、なかなか楽しめた。

ただ、ひとつだけ気になった点がある。
ラスト・シーンだ。
「そういう決着にしちゃったか……」と思ってしまった。
原作は敢(あ)えて物語にケリをつけず余韻を残す形で終わっているのだが、映画版は割と明確な『オチ』を付けて幕を閉じる。

「探していた男を主人公の私立探偵が殺し、その帰り道、殺した男の愛人とすれ違う」
というラストも決して悪くないとは思うが、原作に比べて、やや理に落ちた感じがする。

監督のロバート・アルトマンは、世界三大映画祭すべてで最高の賞を受けているらしい。
名前は聞いたことがある。
私自身は、これが初アルトマン映画鑑賞。

脚本がリイ・ブラケットだった。
同じレイモンド・チャンドラー原作「三つ数えろ」や、「スターウォーズ・帝国の逆襲」の脚本家。
旦那さんは、スペース・オペラの古典「キャプテン・フューチャー」を書いたエドモンド・ハミルトン。
自身もスペース・オペラ小説家だったらしい。

「フィルム・ノワール おすすめ」などのキーワードでグーグル検索すると、レイモンド・チャンドラー原作の「三つ数えろ」「ブロンドの殺人者」が出てくる。
チャンドラーが原作だとは知らなかったが、よくよく調べてみると、それぞれ「大いなる眠り」「さらば愛しき人よ(さようなら愛しい人)」だった。
また「深夜の告白」「青い戦慄」の脚本も書いている。
わりとフィルム・ノワールに縁のある作家だったんだな。

ちなみにノワール映画ではないが、チャンドラーはヒッチコックの「見知らぬ乗客」の共同脚本も手がけている。

2022-04-16 23:01