青葉台旭のノートブック

日記のような小説、小説のような日記

日記のような小説、小説のような日記

11月13日(金)-2-

郊外の町へ行った。
昼間は通りを歩く人も疎らな、まさに『閑静な住宅街』という決まり文句の似合う静かな町だった。
なだらかな坂道を歩いて行くと、丘の上に喫茶店があった。
『シアトル系』を自称する、アメリカ大手チェーンの喫茶店だった。
11月も中旬だというのに今日は晴れて暖かく、コートやジャケットを羽織らなくても厚手のシャツだけで充分だった。
店の前には駐車場があって、その一部を切り取る形でテラス席が拵えてあった。
店内の席も空いていたけれど、少々息苦しく、また流れている音楽も趣味に合わなかった。だからテラス席へ行った。
頭の上からゴーンという音が聞こえた。
見上げると真っ青に澄んだ空に、十文字型の飛行機があった。
4発プロペラ。対潜哨戒機だろうか?
雲ひとつ無い青空の中を、ゆっくりと右から左へ滑って行った。
飛行機は、ゆっくりと滑る。
青空の中をするりするりとジョギングするみたいに滑っていく。
だから見ていると落ち着く。
この町に住むというのは、どんな感じだろう。

(2020年)

2020-11-15 01:35