青葉台旭のノートブック

短編集「ミゲル・ストリート」を読んだ。

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V・S・ナイポール 作
小沢自然、小野正嗣 訳

たいへん面白かった。

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5回書いたからセーフ。

ひとこと感想

第二次世界大戦中、まだイギリスの植民地だったころのトリニダード・トバゴの、とある通りに住む人々の物語。

カリブ海に浮かぶ島のお話という事で、日本人の私としては、まずは南国情緒・トロピカルな雰囲気が楽しかった。

庭先に普通にトロピカルフルーツが生っていて、それを毎日もいで食べるという暮らしに憧れる。

それから、貧しいながらも、ユッタリと揺蕩(たゆた)うように暮らしているダメ男たちの、南国らしい大らかなダメっぷりに憧れる。

しかし最後まで読み通すと、

『本当に、このままで良いのか?』
『ぬるま湯に浸かっているような先の無い暮らしを続けてちゃダメだ』
『いつかは、この場所から出て行かなくちゃ』

という感覚を抱くから不思議だ。

少年は故郷を捨て、大都会を目指す

ダメ男たちを優しく包み込むカリブ海の楽園(=田舎)から、ロンドンあるいはニューヨークという、先進国の首都(=大都会)を目指す主人公の少年。
そして、貧しい中でコツコツ貯めた貯金をはたいて政治家に賄賂を送ってまで、息子を先進国の大学へ進学させようとする母親。

おそらくこの短編集にタグを付けるなら『植民地』『南国』『カリブ海』という言葉が並ぶだろう。

しかし、この短編集を
「楽園で暮らすダメ男たち/まともな暮らしを求め辺境の楽園を捨てて大都会へ旅立つ少年/その少年を『都会で頑張りなさい』と言って送り出す母親」
の物語として見るなら、それは植民地だけのものでも、カリブ海だけのものでもない。
日本中そして世界中のあらゆる場所に今も昔も存在する普遍的な物語だと思った。

2019-09-01 18:13